第22回 経営者コラム|ロングセラーとその極意。 末長く愛されるモノへ。
ここ数年のことですが、創業当初のCM映像や音声を
リバイバルの形で再登場させる手法を取る企業が何社も現れています。
耳慣れた音楽や見慣れた映像が持つチカラを、うまく利用した手法だと感じます。
今回コラムは、長く愛されるモノに宿るチカラはどこからやってくるのか。
ロングセラー商品がなぜ長きに渡り消費者に選ばれ続けるのか。
愛され続ける理由を紐解きながら、
自社展開への糸口を探してみたいと思います。
ロングセラーとベストセラーの違い。ただ単に短期のヒットで終わらせない。
ロングセラー商品は時代を超えて愛され続ける製品であり、
ベストセラーとは異なります。
ベストセラーが短期間で大量に売れる一方で、ロングセラー商品は
長期間にわたり安定した人気を保つことになります。
簡単言えば、短期決戦でドンと売るか?
親しみを持って長く愛される品を目指すか?と言うことです。
ロングセラー商品は、ただ売れ続けるだけではなく、
消費者の生活に深く根ざし、時代や環境の変化にも柔軟に対応しながら、
その価値を維持し続ける商品と言えます。
長く愛されるモノへ自社製品を育て上げるにはどうしたら良いのでしょうか。
ロングセラーへと導くアプローチ。
ロングセラーへと商品を導くためには、戦略的なアプローチが必要です。
ここでは、ロングセラーへつながる手法を3つ挙げ、
それぞれを詳しく説明します。
1、口コミや評価をうまく利用し日々の品質向上と製品改良をおこなう
商品を市場に売り出した後も、品質の向上と製品の改良を継続することが重要です。
Webなどの口コミや書き込みなど、消費者のフィードバックを真摯に受け止め、
不満点や改善点を定期的に分析し、製品開発に反映させるべきです。
技術の革新や素材の改良を視野に、製品の機能性、安全性、利便性、味や見かけなど、
商品に応じたお客様満足度を上げることが、製品の寿命を延ばすことにつながります。
2、ブランドと自社のイメージアップ
ブランドイメージとストーリーを、きちんと消費者へ伝えましょう。
商品の背景や自社の哲学を伝えることで、消費者の心に訴えかけることが重要なのです。
また、品に留まらず。を超えた価値、例えば、環境保護への取り組みや、社会への還元など、
自社自体の信頼性と魅力を高めることも、商品に対する信頼度のアップにつながります。
3、SNS・メール・イベントなどの活用で消費者とのつながりを強化する
SNSやメールマーケティング、イベントの開催などを通じて、
消費者と直接的なコミュニケーションを行い、お客様のニーズを、
しっかり理解することが重要です。
また、限定版製品の発売や顧客ロイヤルティプログラムの導入など、
消費者に新鮮さを提供し続けることで、長期的な関係を築くことができます。
これらの手法は、商品が市場で一過性の成功に留まらず、長期的な価値を提供し続けるためのベースとなります。
長く愛されるためには、日々の努力が必要なのです。
いろいろな分野のロングセラーから学ぶ。
菓子、嗜好品、衣料品などなど、いろいろな分野からロングセラー商品を挙げ、
その成功の秘訣と危機の乗り越え方を探ります。
【菓子】
キットカット(ネスレ)
画像参照:https://nestle.jp/kitkat
○販売開始年/1935年
○販売実績/世界中で広く愛され、数十のフレーバーが存在する
○ロングセラーの理由/
・多様なフレーバーの開発で新鮮さを保ち、地域ごとの限定フレーバーなど
地元の消費者とのつながりを深めている。
・「合格祈願」など、特定の文化や習慣に合わせたマーケティング戦略が功を奏している。
○危機の乗り越え方/
・経済的な危機や競合の台頭時も、ブランドの柔軟な戦略変更と
マーケティングの革新で乗り越えた。
・特に日本での地域限定フレーバーの導入は、ブランドのイメージを刷新し、
新たな顧客層を開拓する契機となった。
【嗜好品】
コカ・コーラ(コカ・コーラ社)
画像参照:https://www.coca-cola.com/jp/ja/brands/coca-cola
○販売開始年/1886年
○販売実績/世界中で販売される、非常に高いブランド認知度を誇る
○ロングセラーの理由/
・一貫した品質と味の保持、強力なブランドイメージとマーケティング戦略。
・世界的な流通ネットワークの構築と、地域ごとの文化や好みに合わせた
マーケティングが成功。
○危機の乗り越え方/
・第二次世界大戦中も兵士にコカ・コーラを届けるなど、ブランド価値を高める活動
を行い、困難な時期を乗り越えた。
・1985年の「ニュー・コーク」の導入失敗後、消費者の声を真摯に受け止め、
オリジナルの味に戻すなど、柔軟な対応で信頼回復を果たした。
【食品】
カップヌードル(日清食品)
画像参照: https://www.cupnoodle.jp/products
○販売開始年/1971年
○販売実績/世界中で販売され、多くのバリエーションが存在する
○ロングセラーの理由/
・食べやすさ、手軽さ、そして多様なフレーバーで幅広い層から支持される。
・時代に合わせた新しい味の開発と、革新的な商品改良で常に消費者の関心を引きつける。
○危機の乗り越え方/
・食品安全に対する問題や競合の台頭にも関わらず、品質管理の徹底と
マーケティング戦略の強化で乗り越えた。
【衣料品】
リーバイス501(リーバイ・ストラウス)
画像参照: https://www.levi.jp/home
○販売開始年/1873年
○販売実績/世界中で愛され続けている
○ロングセラーの理由/
・デニムの代名詞としての高い品質と耐久性。
・時代やファッションの流行に左右されない普遍的なデザイン。
○危機の乗り越え方/
・競合の増加やファッションの変化に対応し、ブランドのアイデンティティを保ちながら
市場ニーズに合わせた製品展開を行った。
【文具分野】
ジェットストリーム(三菱鉛筆)
画像参照: https://www.mpuni.co.jp/index.html
○販売開始年/2006年
○販売実績/世界中で評価され、文具愛好家に愛用されている
○ロングセラーの理由/
・書き心地の良さと高速乾燥インクを使用したことで、多くの支持を得る。
・常にユーザーのニーズに応えるための改良と新製品の開発を続ける。
○危機の乗り越え方/
・デジタル化の時代においても、手書きのニーズは完全には消えておらず、
個人的な好みで紙やペンが選ばれています。
デジタルとアナログのバランスを見極め、手書きの美しさと機能性を追求
することで、文具としての新たな価値を創造し続けることで危機を乗り越えています。
【日用品】
アタック洗剤(花王)
画像参照:https://www.kao.co.jp/attack
○販売開始年/1987年
○販売実績/日本国内外で広く使用される
○ロングセラーの理由/
・環境への配慮と高い洗浄力を兼ね備え、消費者のニーズに応える。
・持続可能な製品開発と、環境保護への取り組みで支持を集める。
・コマーシャルに、人気俳優が出演するなど若者へのアプローチも行なっている。
○経緯と危機の乗り越え方/
・環境問題の高まりという社会的な要請に応える形で、生分解性の高い成分使用した製品の
開発に成功。これにより、環境に優しい洗剤としてのブランドイメージを確立した。
これらのロングセラー商品には、時代の変化に対応し続ける柔軟性と、
消費者のニーズに深く応える革新性があります。
また、ロングセラー商品と呼ばれるものは単に長く市場に存在するだけでなく、
変化の時期や時代を好機ととらえ、時代と共に進化し続けることで、
その地位を確固たるものにしています。
まとめ
成功の背後には、品質へのこだわり、時代に合わせた革新、
そして何よりもブランドが直面した危機を乗り越える強固な意志があります。
各ブランドが直面した危機を乗り越えた経緯には特に、
光る戦略が隠されているのです。
それぞれの商品がなぜ長きにわたって愛され続けているのかを
理解する上でも「危機の乗り越え方」こそ、学ぶべき要素とも言えるでしょう。
参考に挙げた商品の「ロングセラーたる理由」、
「危機の乗り越え方」の中の多くのヒントを見逃さず、自社商品に置き換え、
自社らしさを加えた展開として戦略を練ることをお勧めします。
まずは、自社商品や取り扱い商品に思い入れを持つこと、
そして、ここが好きだ!というポイントを見つけ出すこと。
自分が好きなものであれば、消費者であるお客さまへの
アプローチも変わってきます。
好きなものだからこそ、その商品の良さを伝えたい!という
意欲がふつふつと湧いてくるのです。
好きこそ物の上手なれという言葉がありますが、
好きこそ、ロングセラー商品へ育てる上手な第一歩なのです。