第23回 経営者コラム|国内外企業のユニークなコラボを教科書に、地場・自社展開へ!
「ハット同盟」というCM、ご存知でしょうか。
このコラボレーション企画は、2019年、「8月10日ハットの日」を前に、Twitter上でイエローハット公式アカウントが、同じ「ハット」の名を持つピザハット公式アカウントにコラボを呼びかけたのがきっかけだそう。
その後、リンガーハットも参入し3社間コラボとなり、CMそしてYouTubeへと公開されました。
このように、企業間コラボレーションは、他方の顧客から新たな層を開拓することにもつながり、ブランドイメージを刷新する効果的な手法とも言えます。
同業種間の意外な組み合わせから、異業種間の創造的なパートナーシップまで、ここでは成功した企業コラボレーションの例を紹介し、自社での展開方法について考察します。
目次
コラボレーションには想像力が必要。過去例を学び、思いを巡らそう。
コラボレーションを行うためには、未来を想像するビジョンが必要です。
そのためには、過去の事例を学び想像力を鍛える必要があります。
では学びのもとである、海外と国内のコラボレーション例を、「Web」「イベント」「CM」「そのほか」の4カテゴリに分け、さっそく見てみましょう。
【Web】コラボレーション例
Nike & Apple
商品名/Nike+ Run Club App(2016年)
——————————————————————-
NikeとAppleはNike+ Run Club App(アプリ)を共同開発。
このアプリはランナーのパフォーマンス追跡とコミュニティ形成を目的とし、スマートウォッチとの連携機能を提供。
ランナー向けのアプリとして高い評価を受け、健康やフィットネスに対する意識が高い消費者層を中心に広く利用されています。
両ブランドの技術とマーケティング力の融合が、両ブランドそれぞれの顧客を繋ぎ、ブランド力をもさらに引き上げました。
——————————————————————-
画像出典:Nike Run Club,20240315アクセス,https://www.nike.com/jp/nrc-app
いまでは当たり前となったスマートウォッチとフィットネスの連携ですが、このコラボレーションをスタートした2016年頃は、かなり斬新な取り組みだったと記憶しています。
他方ブランドの利用者が別ブランドの利用者に繋がった顧客獲得例のコラボレーションです。
【イベント】コラボレーション 例
Red Bull & GoPro
商品名/ Red Bull Stratos(2012年)
——————————————————————-
宇宙空間からのスカイダイビングプロジェクト「Red Bull Stratos」において、Red BullとGoProは共同でこの歴史的イベントを記録し、世界中に配信しました。
このプロジェクトは世界中で大きな注目を集め、ライブストリーミングされたイベントは数百万人に視聴されました。
Red Bullのブランドイメージを「極限スポーツと冒険」に強固に結びつけ、GoProのカメラが高難度の撮影にも耐えうる高品質な機材であることを証明しました。
——————————————————————-
画像出典:RedBull,20240315アクセス,https://www.redbull.com/jp-ja/red-bull-stratos-2017-09-04
Youtuberと言えばGoProを使う、という印象があるのは、このコラボレーションイベントが注目を浴びたことも一因かもしれません。
商品の売れ行きをも左右したコラボレーション例です。
【CM】コラボレーション 例
カルピス & 美少女戦士セーラームーン
商品名/カルピスウォーター「美少女戦士セーラームーン」デザインボトル(2019年)
——————————————————————-
アサヒ飲料は「美少女戦士セーラームーン」とコラボレーションし、特別デザインのカルピスウォーターボトルを限定販売。
このキャンペーンはテレビCMやウェブで大きく展開されました。
アニメファンを中心に大きな人気を集め、特別デザインボトルはコレクターズアイテムとしても高い価値を持ちました。
このキャンペーンは、カルピスウォーターのブランドイメージを若年層に広めることに成功しました。
——————————————————————-
画像出典:アニメアニメ,20240315アクセス,
https://animeanime.jp/article/img/2020/12/06/58093/372164.html
カルピスとセーラームーン、まさかの異分野がコラボレーションする。
これこそ、コラボレーションの醍醐味です。
【そのほか】コラボレーション 例
Domino’s & Ford
商品名/自動運転ピザ配達テスト(2017年)
Domino’s PizzaとFordが協力して自動運転車を使ったピザ配達のテストを実施。
この取り組みはテクノロジーとフードデリバリーサービスの融合を探る試みとして注目されました。
画像出典:Response,自動運転車がピザを配達、フォードとドミノピザが実証実験へ 4枚目の写真・画像, 2017年8月30日(水)23時30分,https://response.jp/article/2017/08/30/299146.html
近い未来に実現するかもしれないシステムも、この様なコラボレーションから生まれます。
ANA & Gundam
商品名/GUNDAM JET(2010年)
ANAは人気アニメ「ガンダム」とのコラボレーションにより、ガンダムデザインの特別塗装機「GUNDAM JET」を運行。
航空機の外装だけでなく、機内のアメニティや特別映像の上映など、多角的にコラボレーションが展開されました。
画像出典:ANA,プレスリリース第10-079,2010年6月15日,
https://www.anahd.co.jp/pr/10_0406/10-079.html
大企業だからできることもありますが、コラボレーションの考え方は、大企業も小規模な事業者も変わりはありません。
自社以外の誰かとタッグを組み、互いの事業や製品などの魅力を引き出すきっかけ作りにもなるのです。
ゼロベースからはじめる、コラボレーションの進め方
さて、コラボレーションへの想像力が高まったところで、コラボレーションを企画するには、どのような進め方をすべきなのか?
実際の動きを見ていきましょう。
例として、
「精肉業」と「ファッション業」のコラボレーションを前提に考えてみます。
01.目的は?=コンセプトを決める
何を達成したいのか具体的な目標を定めます。
コンセプトの方向性、例えば、「精肉業のバックヤードをファッションを通じて伝える」、「ファッションアイテムを通じて精肉業を若者にもアピールする」など。
コンセプト=こうなりたい!
02.呼びかける相手は?=ターゲットを見定める
どの市場や顧客層をターゲットにするか決定します。
03.コラボレーションする相手は?=パートナーを選定する
共通の価値観があるか?
事業者間で共通する価値観やビジョンがあるか?確認します。
04.それぞれの強みとそれぞれができることは?=自社と他社の分析をおこなう
それぞれの事業者が持つ、強みやできることを明確にし、コラボレーションによって何を生み出すことができるか?
シミュレーションしましょう。
05.コラボレーションアイデアを出し合い、企画立案を行う
1)アイデア打ち合わせ
異業種だからこそ生まれるユニークなアイデアを出し合います。
例えば、精肉業由来の素材を使用したファッションアイテムの開発、精肉の形を模したアクセサリーなど。
2)企画の具体化をおこなう
アイデアをもとに、実際に生産可能で市場受けする可能性がある企画を選定。
具体的な計画を立てます。
3)プロジェクトの管理体制を整える
事業者ごとにそれぞれの役割分担をおこなう
各事業者の役割を明確に分担し、プロジェクト管理者を指名します。
スケジュールを立てる
プロジェクトのタイムラインを作成し、各フェーズの期限を設定します。
06.製品開発とテストをおこなう
1)企画に基づいたモノ・イベント・など制作物を作る。
2)対象となるお客さま層に対し、市場テストを実施する。
07.マーケティング戦略を考える
1)ブランディングを行う
コラボレーションのストーリーやメッセージを明らかにし、ターゲットとなる層に響くと考えられるブランディングを行います。
2)プロモーションの計画を立てる
例えば、SNSを活用したプロモーション、イベントの開催、インフルエンサー活用など、効果的なマーケティング戦略を考えます。
08.販売経路の選定、販売時評価の収集体制を整える
1)販売経路を選定する
オンライン販売、ポップアップストア、卸売りなど、最適な販売チャネルを選定します。
2)成果の評価とフィードバックを得る手段を選定
販売データや顧客のフィードバックを収集し、成功した点や改善点を見出し、その後の改善などへ繋げる。
まずは、気の合う異業種の経営者や、何かしらか共通するビジョンを持っている事業者を見つけることが、コラボレーションのきっかけになるかもしれません。
コラボレーションを行うということは、お互いを信じ、お互いの力を合わせ新しい何かを生み出すという作業です。
何らかの共通項があることは、コラボレーションすることにおいて、必須条件となるでしょう。
また、現在のようなデジタル時代においては、やはりデジタルを駆使することもコラボレーションにおいて非常に有効な手段となります。
様々なデータを活用して、市場のニーズや最新のトレンドを把握することで、異業種間のパートナーシップをさらに活かすことができるでしょう。
中でもオンライン上での広告展開は、特にコストパフォーマンスに優れていますし、狙ったターゲットに直接リーチすることが可能です。
DXを駆使することも念頭に、コラボレーションを進めていきましょう。
まとめ
コラボレーションは、ブランドイメージを新たにし新たな顧客層の獲得が期待できることから、売上増加に繋がる可能性がある施策です。
成功への鍵は、事業者間のそれぞれの個性や特殊性をいかに掛け合わせることができるか?
そして、そのコラボレーションで、あらたな市場を新しい視点で開拓することができるかどうかにかかっています。
自社の強み、そして、相手事業者が気づいていない互いの強みを指摘し合い、理解し、パートナーとして新しい価値を創造することが事業成長とへとつながります。
オープンなコミュニケーション、互いの知識とネットワークを共有し、共同で目標に取り組むことで、予想もしなかった新しさと顧客をも惹きつける魅力のある事業へと昇華することにもつながるのです。