第31回 経営者コラム|衆院選に見るSNS戦略を軸に中小企業の若年層・高齢層への アプローチを考える。
SNSなどのネット展開でも注目を集めた選挙であった2024年衆院選。
若者を中心とした幅広い有権者へのアプローチとして多くの政党が各種SNSを活用し候補者や政策をアピールしましたが、SNSは果たして、若年層のみをターゲットとした広報手段に留まるものなのでしょうか?
SNSを通じた広報は、企業にとっても重要な課題であることから、今回コラムでは衆院選でのSNS戦略を紐解き、その成否を振り返りながら中小企業が活用できるSNS戦略の展開について考えます。
衆院選における各政党SNS戦略を比較。見えてきたものは?
各政党の「使用SNS」「戦略内容」「ターゲットとアプローチ」「若者の口コミ」「60代以上の口コミ」などを表にまとめました。
出典:読売新聞オンライン, 衆院選2024 衆議院選挙の18・19歳の投票率43・06%…
全体を10・79ポイント下回る,2024/10/30 23:01,
https://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/20241030-OYT1T50230/
出典:読売新聞オンライン, 与党が過半数の見通し、自民苦戦・立民は議席増の勢い・維新は不振
…読売序盤情勢調査,2024/10/16 23:00,
https://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/20241016-OYT1T50164/
出典:読売新聞オンライン, 9党の公約一覧…「経済・財政」「政治改革」など主要政策を比較, 2024/10/14 05:00,
https://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/20241021-OYT8T50143/
出典:朝日新聞デジタル, 2024衆院選 注目候補の当選・落選結果
衆院選2024 各党の獲得議席,2024/10/27,
https://www.asahi.com/senkyo/shuinsen/2024/chumoku/
出典:朝日新聞デジタル, 衆院選 開票速報, 2024/11/19 アクセス,
https://www.asahi.com/senkyo/shuinsen/
出典:選挙ドットコム, 【衆院選2024】年金どうなる?安全保障と社会保障の争点を徹底解説!
各党のスタンスは?選挙ドットコムちゃんねるまとめ,2024/10/21, https://go2senkyo.com/articles/2024/10/21/102211.html
出典:選挙ドットコム, 衆院選開票結果, 2024/11/19 アクセス, https://shugiin.go2senkyo.com/50/
出典:日テレNEWS NNN, 【ひと目で分かる政策比較】物価高対策 各政党の違いは?, 2024/10/16 18:55,
https://news.ntv.co.jp/category/politics/1867b0d9780747a9aded8af03ac47554
出典:zero選挙, 2024衆院選候補者アンケート【ひと目で分かる政策比較】
物価高対策 各政党の違いは?,2024年10月26日 19:20最終更新, https://www.ntv.co.jp/election2024/research/party/
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各政党はSNSを活用し、ターゲット層に合わせたアプローチで支持を集めましたが、特に若年層へのアプローチが支持拡大につながった一方、60代以上からは信頼性や実績重視の意見が多く見られました。
評価された点と不評点から導き出されたポイントを企業展開のヒントにする
評価された点
SNSを活用することで、従来の広報手段よりもスピーディに政策やメッセージが発信されました。また、その声が届く層が広がり、特に若年層への訴求には大きな効果がありました。
また、立憲民主党や維新の会は、「親しみやすさ」や「革新性」などを強調することで新たな支持層を取り込むことに成功しました。
その他、LINEやYouTubeなどの手軽で視覚的なSNSツールは、わかりやすさと利便性から支持を集めました。
不評点
SNSがメインのため、高齢層にはやや届きにくい面がありました。
また、親しみやすさを重視するあまり、政策の具体性が不足する傾向も見られました。
特に若年層の関心を引きつける内容は多く見られましたが、具体的な政策や実績を明示できなかったため、全体の信頼性が若干低下しました。
幅広い年齢層に訴求できる工夫が、今後は必要となってくるでしょう。
中小企業におけるSNS戦略に展開できそうなヒント
1. 親しみやすいブランディング
立憲民主党や維新の会が行った親しみやすい動画やイラストによるアプローチは、中小企業のブランディングにも役立ちます。InstagramやTikTokでの商品紹介や、企業の日常の一コマを映し出すことで、ユーザーに親しみを感じてもらえます。
新しい価値観や共感を生むようなコンテンツを短時間で提供することが、若年層に支持されるブランドイメージを構築する方法としても有効です。
2. 双方向のコミュニケーション
国民民主党のYouTubeライブでの双方向の対話は、企業が顧客との信頼を築くための戦略として応用できるでしょう。
ライブ配信を使い、ユーザーからの質問にリアルタイムで回答する場を設けたり、製品やサービスについての疑問をその場で解決したりすることで、顧客の満足度と親近感が向上します。
特にサービス業などでは、顧客との直接的なコミュニケーションがリピート顧客の創出に繋がります。
3. LINEを活用した顧客サポート
公明党がLINEを通じて特定層に向けて情報発信を行った戦略は、中高年層向けの中小企業の顧客サポートにも役立ちます。
LINEで新商品やサービスの情報、キャンペーン告知などを通知し、アフターサポートや問い合わせ対応を通じて信頼感を高めることができます。
特に、普段LINEを活用している世代には直接的な接点を持てるため、サービス満足度の向上が見込めます。
まとめ
SNSを活用した広報戦略は、ターゲット層に応じた内容と媒体の選定が鍵です。
2024年の衆院選では、特に若年層をターゲットとしたSNS戦略が目立ちましたが、中高年層には信頼性や利便性を重視した別ツールも必要です。
短い期間でいかにして効果的に伝えたい情報を届けるか?
そしてそれが、人々に届いたのか否かを知ることができる、まるでSNSマーケティングのテスト期間のような選挙期間だったように感じます。
中小企業もSNS広報展開において、年齢層に合わせたメッセージと媒体を組み合わせることで、より多くの層に効果的に自社製品や自社情報を発信・訴求することができるであろうことが、選挙内で行われたSNS戦略とその口コミから、表面化したとも感じます。
今後の中小企の広報業戦略としては、SNSだけにとらわれず、多様なコミュニケーション手段を柔軟に取り入れることで、若者だけではなく、中年や高齢者へ届くメッセージとなると考えますし、企業成長や広報成長にもつながると考えます。
選挙活動や事業活動におけるSNSの利点は、情報発信のスピードと幅広い層への到達力にあります。
また、低コストで双方向のコミュニケーションを通じて事業で言うなら顧客、選挙で言えば有権者との距離を縮められる点も大きな魅力です。
一方、注意点としては、不適切な投稿や誤情報が広がるリスクがあること、また、発信内容が特定の層に偏ると支持や顧客離れを招く可能性があると言う点です。
さらに、高齢層などSNSを利用しない層に情報が届かないことも課題です。
これらを踏まえ、発信内容が適切であるか否かをきちんとチェックする体制を整え、他の媒体との併用を意識しつつ、うまくSNSを活用することが肝心です。