第36回経営者コラム|トレンドに6ついて考える04.リバイバル活⽤術で乗り切る! トレンド周期がどんどん短くなっている? 流⾏りだけに振り回されない ⾒極める⽬と取捨選択.

「ブラックファッションが流⾏ると不景気の兆し」と⾔われています。
ファッションの⾊彩と景気には密接な関係があり、不景気の際には⿊だけでなく、⽩やグレーなどの無彩⾊や、アースカラー、ネイビーなど落ち着いた⾊が好まれる傾向が⼤いに⾒られます。
これは、消費者が経済的な不安から着回しやすく⻑く使える⾊を選ぶ傾向があるためと⾔われています。
例を挙げるなら、1970 年代のオイルショックの時期にはアースカラーが、1990 年代のバブル崩壊後にはネイビーやモノトーンが流⾏しました。
このように、景気の動向はファッションの⾊選びに⼤きな影響を与えています。
しかし、おしゃれな⼈ほど流⾏に流されず、⾃分に合ったファッションカラーやスタイルを⼤切にしていますし、トレンドは周期をたどりながら繰り返されます。これはビジネスにも通じる考え⽅です。繰り返されるリバイバルトレンドを活⽤しながら、⾃社のスタイルを⼤切にする。
⼀時的なトレンドに⾶び付かずうまく⾃社スタイルを表現する!そんな切り⼝で、今回コラムを進めて⾏きます。
わかりやすい周期例として
「ファッショントレンド」に注⽬してみる
ファッショントレンドは、10 年単位で変化していましたが、現在では数年、場合によっては数ヶ⽉で変わることもあります。
例えば、2000 年代初頭の Y2K ファッションが再び注⽬を集めるなど過去のスタイルがリバイバルする現象も⾒られます。
(Y2K ファッションとは、2000 年前後に流⾏したスタイル。クロップド丈のトップスやローライズデニム、ミニスカート、厚底シューズなどが特徴。当時のポップカルチャーやテクノロジーへの憧れを反映し、現在は Z 世代を中⼼に再注⽬)
このようなトレンドの短命化は、SNS の普及や情報の⾼速化が影響しています。
ファッションだけでなく、「⾷」「旅⾏」「ライフスタイル全般」においても同様の傾向が⾒られます。
しかし、基本的なファッショントレンドは『周期変化』を辿ることが多いことから、わかりやすい例として、ファッショントレンドにヒントを得たいと思います。
【例 1】ファッションシルエット(ワイドパンツとスキニーパンツ)
ファッションのシルエットは、約 10 年周期で変化する傾向があります。
例えば、2000 年代初頭にはスキニーパンツが流⾏し、その後 2010 年代にはワイドパンツが主流となりました。その後、再びスリムなシルエットが注⽬されるなど、トレンドが循環しています。
【例 2】ファッション素材(デニム、コーデュロイ、レザー)
素材のトレンドも約 10 年周期で変化します。例えば、デニム素材は1990 年代にブームとなり、2000 年代には⼀時的に減少しましたが、
2010 年代以降再び注⽬を集めています。同様に、コーデュロイやレザー素材も定期的にトレンドとして復活しています。
【例 3】ファッションの柄(チェック柄、アニマル柄、ボーダー)
柄のトレンドは約 5〜7 年周期で変化することが多いようです。チェック柄はクラシックな印象を与えるため、秋冬シーズンに定期的に登場しています。アニマル柄やボーダー柄も、⼀定の周期でトレンドとして再浮上しています。
出典: iDAマガジン,ファッションの流行って誰が決めてるの?
ファッションの「シルエット・素材・柄」は、
定番のスタイルが繰り返されることから、いろいろな商材展開しやすく、リバイバル活⽤として取り⼊れやすいテーマとも⾔えます。
「⾷」や「くらし」、「社会の価値観」など⽇本のトレンド周期
ファッション以外でも、「⾷」や「社会の価値観」には
周期的にトレンドが訪れます。以下に 3 つの具体例を挙げてみます。
◼⾷のトレンド__01
ジャンクフードからグルメ志向への変遷
周期:約 10 年周期で変化
ジャンクフード、例えばハンバーガーは、健康志向の⾼まりとともに、素材や調理法にこだわった「グルメバーガー」へと進化したものもあります。
このような⾷のトレンドは、約 10 年ごとに⾒直される傾向があるようです。
出典: @Living,ハンバーガー⼥⼦が解説。ジャンクフードからグルメへ進化するハンバーガーの世界,
使⽤したハンバーグ店の出店が、⽇本各地に⾒られます。これは、ハンバーガーからさらに変化したケースとも⾔えます。
◼⾷のトレンド__02
町中華の再注⽬
周期:約 10〜20 年周期で再評価される傾向
地域に根ざした昔ながらの中華料理店「町中華」。
近年、若者を中⼼に「昭和レトロ」や「ノスタルジー」を求める動きが強まり、町中華が再び注⽬を集めています。
出典:蒲⽥の安くておいしい町中華 3 選!昼は定⾷、夜は酒、使い勝⼿抜群の店そろってますさんたつ by 散歩の達⼈
BS-TBS「町中華で飲ろうぜ」、テレ朝チャンネルの「ぶらぶら町中華」などのテレビ番組も近年⼈気。
町中華の再評価は、単なる⾷のトレンドにとどまらず、社会全体の価値観や⼼理的なニーズの変化を反映しています。
社会や経済が不安定な時期には、安⼼感や懐かしさを求める⼼理が働き、過去の⽂化やスタイルが再び脚光を浴びることが多い傾向があります。
◼ライフスタイルトレンド
レトロブーム
周期:約 20 年周期で再評価
レトロブームは、過去の⽂化やスタイルが再評価される現象ですが、ファッションや⾳楽、ライフスタイルなどさまざまな分野で⾒られます。
出典:いまさら聞けない。なぜこんなにもレトロブーム?TABI LABO
前の項⽬に挙げた「町中華の再注⽬」も、ひとつのレトロブームとも⾔えるかもしれません。
◼社会の価値観
ジェンダー平等と多様性の尊重
周期:約 10 年周期で進展
ジェンダー平等や多様性の尊重は、教育や職場環境などさまざまな分野で注⽬されています。これらの社会的価値観は、約 10 年ごとに⼤きな進展を遂げる傾向があるようです。
例えば、⼥性らしさの象徴ともいうべき「レースやチュール素材」、それに「真珠のアクセサリー」などをおしゃれとして男性が取り⼊れた中性的ファッションが登場しています。
Pinterest(ピンタレスト)では、ユーザが⼦どもの名前を決める⽬的でユニセックスな名前の検索が 90%増を記録しています。
出典:PRTIMES,株式会社 SHIBUYA109 エンタテイメント,2024 年 4 ⽉ 25 ⽇,Z 世代のジェンダー・多様性に関する意識調査, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000295.000033586.html
参考:砂村⾵⾹,⽇経クロストレンド, 20250414 アクセス,https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00761/00006/
これらのトレンドは、社会の変化や価値観の進化と密接に関連し、定期的に再評価される傾向があります。
周期は、SNS などで感じ取ることがでますが、新しいものに⾶び付かず、定番トレンドを取り⼊れることをお勧めします。
トレンドは、なぜ繰り返される?
繰り返されるトレンドには、訳があります。
その⼤きな要因としては、トレンドの鍵をにぎる、つまりその決定権を持ち始めるのが、30 代〜の⼈々であるからと考えられます。
例えば、テレビコマーシャルに使⽤される⾳楽など、あ!懐かしい!と思った経験がありませんか?
その⾳楽は、大にして、約 20 年前に流⾏っていたものが多いのです。
それは、社会での決定権を持ちはじめる 30〜40 代の⼈たちが、⻘春時代に流⾏ったものを現代⾵にリバイバルさせたものである考えると、符合します。こうして、約 20 年前に流⾏っていたものが今によみがえり、新たなトレンドとなる、という訳です。
20 年周期のリバイバルトレンドと 10 年周期のリバイバルトレンド困った時は、このトレンド周期を思い出しトレンドの予測を⽴ててみましょう。きっと、ひらめきがあるはずです。
まとめ
トレンドの変化が激しい今。
流⾏り廃りが激しいとも⾔い換えられますし、トレンドを追い求めるのは⼤変難しい状況です。
もしあなたが SNS を利⽤しているのであれば、SNS を発信だけのツールとして使⽤するのではなく情報収集ツールとして⼤いに活⽤しましょう。
また、周期的に訪れるリバイバルトレンドをうまく汲み上げ現代⾵のアレンジや⾃社らしいアレンジを加え、活かしてみましょう。
どんどん短くなる短期の流⾏に振り回されることなく、⾃社らしさや、お客様層の若かりし頃のトレンドを今どきにアレンジすることで、お客様の⼼を掴むことができるかもしれません。
流⾏だけを追うのではなく、流⾏を活⽤する姿勢とアイデアが求められるのです。
こうしたリバイバルトレンドの活⽤は、アパレル業や雑貨店はもちろん、飲⾷店、美容室、カフェ、観光関連事業者など「体験」や「感性」を重視する業種に特に効果的です。
例を挙げるならば、昭和レトロ⾵の内装やメニュー構成、かつて流⾏した⾳楽やデザインを取り⼊れた商品展開などは、幅広い世代に刺さる可能性があります。
また、地域密着型の⼩売やサービス業でも、お客様の⻘春時代を意識したPOP づくりや SNS 発信で共感を得ることができるでしょう。
トレンドの本質は“懐かしさ”と“新しさ”の掛け合わせにあります。
⾃社らしい切り⼝で、うまくトレンドを再構築する視点が、今後の販促やブランディングに⼤きな⼒となるはずです。