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第39回経営者コラム|トレンドについて考える07 音と香りで売上アップ? 五感マーケティング入門

古来より日本人は、

「音」「香り」「味」「触る」「視る」といった

五感を通じて、四季の移ろいや心情を繊細に感じ取ってきました。
和歌や俳句の中にも、

「香りや音」「季節や思い」を重ねる文化が根づいています。

例えば、与謝蕪村の句「春の海 終日(ひねもす)のたりのたりかな」では、

波の音や春の空気感が、まるで肌で感じられるような表現で
リアルに描かれています。
こうした「五感に敏感な日本人の国民性」は、

現代ビジネスでも他社との差別化を図る上で、

大きな味方になってくれます。

視覚だけに頼らず、「音」「香り」「味覚」「触覚」を使った演出は、

お客様の感情や記憶を刺激し、その場の体験を豊かにすることに

つながる「五感マーケティング」との言える演出です。

本コラムでは、五感マーケティングから期待できる効果や

その入口として取り組みやすい方法などを紹介し、

皆さまにお役立ていただこうと思います。

 

 「視覚だけに頼らない」!?
五感演出が注目される時代背景とは


インターネットやSNS全盛のいま。
情報があふれ、“目”だけで判断していると考えられがちです。
しかし情報があふれている分、消費者は「心地よさ」「癒し」「リアルな体験」を求めており、
言葉や画像だけでは伝わらない、そこにあるプラスアルファの何かを求めています。

そこで注目されているのが、「音」「香り」で記憶に残す演出です。
実際、『Servicescape(*1)』という概念では、
照明や香り、音が顧客の時間や購買行動に影響を与えるとされ、
例えば、ゆったりした照明+落ち着くBGMが客足を伸ばす手助けをしています。
このような背景から、静かな環境の心地よさや、オリジナル演出で差別化を狙う店舗が増えています。

 

(*1) 『Servicescape(サービススケープ)』とは、サービスが提供される物理的・感覚的な
環境全体を指す概念です。照明・音・香り・温度・内装・レイアウトなどが含まれ、
顧客の印象や行動(滞在時間・購買意欲など)に影響を与えるとされます。

米国のマーケティング学者メアリー・ジョーン・ビトナーが提唱しました。

例) 東京「NAKED FLOWERS」



花の展示と連動し、照明や音楽、香りも組み合わせた
「没入型空間演出」を行っています。
視覚だけでなく五感すべてに訴えかけることで、
来場者の記憶に強く残る体験を作り出しています。
 出典:GLITTER,国内初常設!パーソナルデータを活用した花のアート展「NAKED FLOWERS」であなたの魅力を再発見。, 2022.03.18,https://glitterofficial.com/2022/03/nakedflowersforyou/

 

 

照明の“暖色”が滞在時間を延ばすという根拠は、
複数の実証研究や業界レポートで示されています。


実証資料1【照明環境とお客様の行動に関する業界レポート】

温かみのある「暖色照明(2700~3500 K)」は、居心地が良く

長くとどまりたくなる居心地を演出し、高級ブティックやカフェなどで積極的に用いられています。

実証資料2【小売業における店舗ライティングガイド】

小売スペースでの照明設計で、「温かい光の照明は顧客がより長く滞在し、

製品との接点が増えることで購買率が向上する」と明言されており、
実際に“滞留時間の増加により売上がアップする”とされています

“店舗の売上を左右する照明”
参考: https://daiyu-lighting.com/blog/blog-blog/%E5%BA%97%E8%88%97%E3%81%AE%E5%A3%B2%E4%B8%8A%E3%82%92%E5%B7%A6%E5%8F%B3%E3%81%99%E3%82%8B%E7%85%A7%E6%98%8E%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%83%AB%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%81%AE%E9%87%8D?utm_source=chatgpt.com

 

【取り入れやすいポイント】

飲食店の場合、「照明を少し暖色にして、落ち着いた音楽を流す」
だけでも滞在時間が延び、売上アップにつながりやすい。

資料からもわかるように
「照明を少し暖色にし、落ち着いた音楽を流すだけでも

滞在時間が延びる」ことが裏付けられています。
照明やBGMの工夫だけでも購入へ至る行動を促す実効性があることが

示されています。

 

 

「音・香り・触覚」が影響を与える。

買いたい!また行きたい!へ導く五感演出

音(BGM・店内音響)

 

音の演出が売上に影響を与えることは多くの研究で明らかになっています。

早いテンポの音楽は購買の“選択幅”を広げる傾向があることが示され、

実験参加者は、速い音楽の下で多様な商品を選びやすかった
という結果もあります。
また、心地よい音楽は店内の滞在時間を延ばし、
結果的に購入数も増える傾向があるのです。

出典:昭和女子大学 広報部,“コンビニエンスストアのBGM テンポの速さが売り上げ増に貢献”,昭和女子大学公式サイト.2020年12月3日,https://www.swu.ac.jp/news/nid00003790.html,

例 )静岡市「静岡PARCO」
館内BGMを時間帯や客層に合わせて変えるという工夫を行い、
リラックス感を演出しています。
お昼にはポップス、夕方にはジャズといった変化が、

滞在時間を自然に延ばす要因になるのです。

出典:静岡PARCO公式.“静岡PARCO”.PARCO.更新日不明.
https://shizuoka.parco.jp/(アクセス日:2025年7月11日)

 

 

 

香り(アロマ・空間演出)

ラベンダーやバニラなどのリラックス系の香りは滞在時間を増加させ、購買率を向上させる効果が知られています。
さらに、ミントや柑橘類は爽快感があり、作業効率をあげる香りとしても
注目されています。スタッフの作業効率アップも狙えます。
ただし注意点として、香りは空間全体に広がるため、扱いを間違えると逆効果にもなるので、使用量や拡散の工夫が必要です。記憶に残る顧客体験を生み来店やリピートにつながる「ブランドイメージの香り例」をみてみましょう。

 

例 )Apple Store(アップルストア)

全世界店舗で展開。Appleは空調システムを通じて

「アップルらしい」青リンゴ+ミントのシグネチャーフレグランス(*2)を拡散。
この香りは店内の空間体験を統一し、顧客がブランドと香りを直結する狙いがあります。
faxdm屋ドットコム+2note(ノート)+2アドバンスサービスグループ+2

(*2)シグネチャーフレグランスとは

企業やブランドが“そのブランドらしさ”を表現するために特別に調香した専用の香りのこと。
「この香り=あのお店(あのブランド)」と思い出せるように設計された“香りのロゴマーク”のようなものです。

 

例 )シンガポール航空

機内香り演出。「Stefan Floridian Waters(ステファン・フロリディアン・ウォーターズ)」

という名の専用アロマを客室乗務員の制服や蒸しタオルなどの機内サービスに

使用しています。この香りは“南国リゾート”のイメージを表し、

機内に再度足を踏み入れた人は、その香りに覚えがあると気付くと言います。
シンガポール航空は「世界一のサービス」を掲げており、

香りをホスピタリティの一部と位置づけ、乗客の記憶に残る演出として
評価されています。

出典:株式会社ポート,“〖香りの実例紹介〗多くのビジネスチャンスをもたらす”,iPROS(香料・添加物業界メディア).2021年2月10日,https://mono.ipros.com/product/detail/2000576693/

 

 

 

触覚(手の記憶)

 

例 )東京・吉祥寺の文具店「36 Sublo(サブロ)」

手触りのよい紙製品や木製雑貨を実際に手に取って試せる展示に
力を入れています。五感の中でも特に“手の記憶”を大切にしています。

出典:中央ベストホーム編集部.“吉祥寺の雑貨屋「36 Sublo」”.中央ベストホーム.2023年8月16日.https://www.chuo-besthome.co.jp/local/kichijyoji-36sublo/(アクセス日:2025年7月13日)

 

【取り入れやすいポイント】

例えば、カフェならば、コーヒーの香りを店外に漂わせる工夫を行うことで、立ち寄りきっかけになるでしょう。

「うなぎ屋」や「焼き鳥屋」の香り集客と同じ考え方と言えます。

物販では、手に取れる展示品を置くと体験価値が上がります。
ぜひお試しください。

 

五感演出のポイント。
注意点をしっかり押さえておこう!


 

 

 1.空間の一貫性を保つ

香りや音は、店のテーマや商品に合っているかが重要。
落ち着きあるカフェなら、ミントや柑橘よりも、
バニラや抹茶のような穏やかな香りを。

2.音量と話し声のバランス

観光客の多い店舗では、BGMが大きすぎると会話の邪魔に。
声が通る程度に音量調整を行いましょう。

 

3.香りの濃さは控えめに

強すぎる香りは好みが分かれ、「頭痛」や「不快感」を与える可能性も。
狭い店内であれば、香り効果を感じつつも軽く香る程度が目安。

 

4.触感への気配りも忘れずに

商品サンプルや試着・試用できる什器、椅子・テーブルなどの質感にも注意が必要。
ザラつき・ベタつき・冷たすぎる・硬すぎるなど、不快な触感は体験価値を下げます。
木材や布素材など、心地よく安心感のある手触りを意識しましょう。

 

5.安全管理

アロマオイルなどは、定期的な換気やアレルギーチェックが必要な場合も。

 

 

 

業種別アイデア!
低予算ではじめられる五感を利用した
施策と期待できる効果!?

 

業種ごとの「五感演出」と

「低予算でできる施策例」を、挙げてみます。

 

 

小売業(雑貨・アパレルなど)

  • 「触ってOK」のPOPを設置
    → 購買意欲を高める体験型の売場に
  • 電球色LEDに変更
    → 温もりある空間で滞在時間を延ばす

 

飲食店・カフェ

  • コーヒーや焼き立ての香りを店外に広げる
    → 食欲を刺激し、立ち寄り率アップ
  • ジャズやボサノバのBGMを流す
    → くつろぎ感を演出し、長居につなげる

 

美容室・サロン

  • ヒノキやシトラスの香りをディフューザーで拡散
    → 癒し・清潔感を強調し、安心感を与える
  • フリーのヒーリングBGMを導入
    → 静かな空間で非日常を演出

 

不動産・住宅展示場

  • 木の香りや石けん系アロマをモデルルームに使用
    → 「暮らしのリアル感」を五感で伝える
  • ピアノ曲をBGMに

→ 落ち着いた商談空間をつくる

 

サービス窓口

  • 時間帯でBGMを切り替える(例:朝は明るく、夕方は落ち着いた音)
    → 利用者の心理に寄り添い、居心地アップ
  • パンフレットや商品に「ご自由にどうぞ」のPOPを今一度見直す
    → 手に取る(触れる)行動を促し、関心を高める

 

まとめ

「音」「香り」「味」「触る」「視る」。

五感を活かした空間演出は、

記憶に残る顧客体験を生み出し、再来店や口コミにつながります。
店舗にあった香り・BGM・触れられる展示など、

低予算でも工夫次第で効果的な感性演出は可能だということが、

お分かりいただけたと思います。

お客様に「ここならでは」の体験を感じてもらい

「また来たい」「誰かにおすすめしたい」と思わせる、
記憶に残る心地よさの提供を心がける。

ただそれだけで、店舗から企業まで取り入れやすい

「五感マーケティング」。

本コラムをきっかけに、小さな“五感演出”を始めてみませんか。

 

 

 

 

 

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