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第44回経営者コラム|トレンドについて考える12 「老舗」という言葉が トレンドワードの一つに上がる理由。 〜歴史ある事業者の新展開と新たな挑戦に学ぶ〜

26年の幕開けです。昨年のクリスマスや年末年始は、

料理店や百貨店のケーキや料理、おせちなどを楽しんだ方も多いはず。
ちょっと奮発して「老舗」の味に手を伸ばした——そんな方もいるでしょう。

長く愛されてきた老舗は、“誇り=ステータス”です。
でも、ステータスは“定位置”のことではありません。
ハリウッド俳優の大看板を脱いで大統領になったロナルド・レーガンのように、
歩んだ道を土台に、次の舞台へ羽ばたく選択だってできるのです。

大切なのは、守るべき芯はそのままに、伝え方や形を静かに更新する力。
なぜ老舗が長く残るのか——
そこには「時代の風を読むトップの判断」があります。
新しい年の最初の一歩として、その姿勢から私たちの商いのヒントを
拾っていきましょう。

参考画像:とらや帝国ホテル,https://www.toraya-group.co.jp/shops/shop-12

参考:White House Historical Association.“Ronald Reagan.” White House Historical Association, 2025-12-10, https://www.whitehousehistory.org/bios/ronald-reagan,(日付記載なし)

 

歴史ある事業者「老舗」が
新展開に至ったのはなぜ?

 

1) 日本の老舗の“すがた”—— 数・業種・背景

日本には創業100年以上が4万2966社(2023年)。
数字だけ見ると「けっこうあるじゃないか」と思われるかもしれませんが、
企業の平均寿命は23.1年。マラソンでいえば、皆がハーフできついところ、
100年走り続ける“超ウルトラ級”が老舗、というわけです。
多いのは清酒(出現率80.5%!)、和菓子、仏壇・仏具、砂糖、食酢、
花火、金融など、地域暮らしの“基礎代謝”を支える業種が圧倒的多数です。

売上規模は1億円未満が42.7%と小ぶりも多い一方で、
どっしり大企業の顔ぶれにも老舗はしっかり混ざっています。

参考:東京商工リサーチ.“2023年の全国「老舗企業」調査”. 東京商工リサーチ, 2022-12-26, https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1197122_1527.html, 2022-12-26
参考:東京商工リサーチ.“倒産企業の平均寿命は23.1年、2年連続で縮む”. 東京商工リサーチ, 2024-03-05, https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198412_1527.html, 2024-03-05
参考:帝国データバンク.“全国「老舗企業」分析調査(2024年)[PDF]”. 帝国データバンク, 2024-10-24, https://www.tdb.co.jp/resource/files/assets/d4b8e8ee91d1489c9a2abd23a4bb5219/75445a62daa3438794beb5a5e7cdd54c/20241024_%E5%85%A8%E5%9B%BD%E3%80%8C%E8%80%81%E8%88%97%E4%BC%81%E6%A5%AD%E3%80%8D%E5%88%86%E6%9E%90%E8%AA%BF%E6%9F%BB%282024%E5%B9%B4%29.pdf, 2024-10-24

 

 

2) 老舗が支持される理由——「不易」と「流行」の両立

老舗の秘訣ともいうべき“手法”は、二段構え。
1段目は「変えない芯」(理念・品質・約束)。
2段目は「変えてよい外側」(見せ方・使い方・仕組み)。
この二つをうまく重ねるほど、その味わいともいうべき趣が深まります。
たとえば老舗百貨店は、遠隔接客アプリでお客さまとの距離を縮め、
店頭の良さをオンラインにも持ち出しました。
伝統の“懐石”をそのまま配膳するのでなく、器と演出を季節に合わせて
変える感覚です。

 

参考画像:三越伊勢丹アプリ. https://play.google.com/store/apps/details?hl=en&id=jp.isetanmitsukoshi.gcp&utm_source=chatgpt.com&pli=1

参考:三越伊勢丹.“三越伊勢丹アプリ・リモートショッピング・オンラインストア”. 三越伊勢丹 公式サイト, 2025-12-10, https://www.mistore.jp/shopping/campaign/online_cp.html

 

 

3) 直面する現代的課題——人手・コスト・デジタル・承継

もちろん課題も山積みです。
例えば、人は足りない、原材料は高い、生活様式は変わる、
デジタルは待ってくれない、そして承継問題。
そこで老舗は“段取りの軽妙さ”で乗り切りました。
たとえば旅館・加賀屋は早くから自動搬送やシステム化を進め、
現場の手間を減らし、人にしかできない“おもてなし”に
時間を回す工夫を重ねてきました。
老舗の体力は、こうした地味で確かな改善の積み重ねから生まれたのです。

参考画像:加賀屋 公式フォトギャラリー.
https://www.kagaya.co.jp/en/photogallery/?utm_source=chatgpt.com

参考:LOGISTICS SOLUTION.“1980年代の加賀屋の自動搬送システム導入事例から学ぶ”. LOGISTICS SOLUTION, 2021-07-06, https://logi-solu.co.jp/archives/3651, 2021-07-06
参考:SBクリエイティブ.“名旅館「加賀屋」に学ぶ、人とロボットの共存”. ビジネス+IT, 2014-08-04, https://www.sbbit.jp/article/cont1/28307, 2014-08-04

 

 

 

自社事業へ活かす足掛かりに。

老舗の新展開の道から学ぶ

 

【虎屋】

点「商品」から、面「体験」への広げ方

虎屋の“点”は、ようかんや季節の生菓子という確かな味。
そこに「虎屋菓寮・喫茶」での提供、展示の見せ方、
店内の所作までを重ねて体験の“面”をつくり、
新規のお客さまにも伝わる道筋を整えてきました。
海外の方が迷わないよう案内を工夫するなど、入口のハードルを下げる
小さな改善も積み上げています。

 

参考画像:とらや.https://www.toraya-group.co.jp

 

 

何がヒットを生んだか/工夫と姿勢 —
「伝統を語る」より「体験で腑に落ちる」設計に振り切ったこと。
空間・しつらえ・余白で“わかる”を生みました。

声高な拡大ではなく、静かな編集力が光ります。

参考:Toraya Confectionery Co., Ltd.(編集部).“Store & Café.” TORAYA, 2025-12-10,
https://global.toraya-group.co.jp/blogs/store-and-cafe

 

 

 

【カモ井加工紙「mt」】
技術の“転用”が新しい市場をつくる

「工業用テープが、暮らしを飾る相棒に?」——答えは、カモ井加工紙mtです。
和紙の手ざわり、貼ってはがせる軽さ、幅や柄の遊び心。
企業が“正解の使い方”を決めすぎなかったことから、

ユーザーの想像力が伸びやすい余白が生まれ、手帳・ラッピング・配線の目印まで

使い道は自在に広がりました。店頭では“まず貼ってみる”体験を用意。

細かなアップデートを続け、日常の小さな「便利・楽しい」を積み上げています。

 

参考画像:mt.https://masking-tape.jp/en/lineup/special/2024ss/?utm_source=chatgpt.com

 

 

 

何がヒットを生んだか/工夫と姿勢 —

“余白”の価値づくり。用途を押しつけず、小刻みな品ぞろえの実験→定番化で磨く。
工業由来の品質は頑固に守り、見せ方は生活の中で自由自在に。
気づけば“世界の文具箱”で存在感を持つまでに成長しました。

参考:カモ井加工紙株式会社(公式).“マスキングテープ『mt』公式サイト”. masking-tape.jp, 2025-12-10, https://www.masking-tape.jp/,(日付記載なし)
参考:特許庁 広報誌『とっきょ』編集部.“世界で大ヒット「mt」に学ぶ、老舗の知財戦略”. 特許庁, 2019-03-25, https://www.jpo.go.jp/news/koho/kohoshi/vol42/01_page4.html, 2019-03-25

 

【中川政七商店】
“産地の手しごと”を日常のサイズに

工芸の物語は魅力的。でも、毎日使えなければもったいない。
中川政七商店は使い心地・手入れ・価格をていねいに整え、
日常に置けるサイズへ落とし込んできました。
店頭で触れて確かめ、オンラインで細部まで伝える——
出会いの場を“連載”のように続け、少しずつ愛用者を増やすやり方です。
理念は“日本の工芸を元気にする”と短く明快に。判断のよりどころをはっきりさせ、
ぶれない提案を積み重ねています。

 

 

参考画像:中川政七商店.https://www.nakagawa-masashichi.jp/shop/default.aspx?srsltid=AfmBOopOOaB1xjpjheYR_hNBIGfHTtHAsktAX02NyxL43-1Nrba1pEPN&utm_source=chatgpt.com

 

何がヒットを生んだか/工夫と姿勢 —
キーワードは翻訳。素材や技の価値を暮らしの言葉に移し、
価格と使い勝手の折り合いを誠実に探る。
物語に寄りかかり過ぎず、「使われてこそ価値」という目線を貫いたことが、
静かな支持につながりました。

 

参考:中川政七商店(会社案内).“中川政七商店の成り立ち”. 中川政七商店 公式サイト, 2025-12-10, https://www.nakagawa-masashichi.jp/company/about/history.html,(日付記載なし)
参考:Porter Prize 事務局(⼀橋⼤学).“株式会社中川政七商店 | 受賞企業・事業レポート”. ポーター賞(公式), 2015-12-01, https://www.porterprize.org/pastwinner/2015/12/15104405.html, 2015-12-01

 

 

【金剛組】
“残す芯”と“変える型”を分ける

千年以上の仕事をつなぐには、腕前だけでは足りません。
金剛組は、匠の技はそのままに、段取り・検査・安全などのやり方(型)を
今の基準に合わせて整えてきました。手順や点検を文書や図で共有し、
非常時は訓練で備える。伝統を神棚に上げるのではなく、
現場で再現できる形にして受け渡す——
この地道な積み重ねが、長い時間を味方につけています。

 

参考画像:金剛組 https://www.kongogumi.co.jp

 

 

何がヒットを生んだか/工夫と姿勢 —
“作品”の陰でプロセスを磨く胆力。

勘に頼り切らず見える化で再現性を上げ、仕組みで残すと割り切ったこと。

だからこそ、変わらない良さを安定して届け続けられる工夫です。

参考:株式会社金剛組(会社概要).“会社概要”. 金剛組 公式サイト, 2021-04-01, https://www.kongogumi.co.jp/profile.html, 2021-04-011

 

 

 

いま“老舗”が響く理由——
“ずっと同じ”ではなく“ずっと良くする”
“さらに良くする姿勢が感じられる”

 

時代は揺れます。だから人は、変わらない安心を求めつつ、
よくなる手ごたえも欲しい。
「虎屋の体験設計」「カモ井の技術転用」「中川政七商店の生活翻訳」
「金剛組の制度づくり」——みな「芯がブレることなく守り、外側は更新する」
を徹底してきました。
最近では遠隔接客や現場DXが“新しい届け方”となり、伝統の距離を

グッと縮めています。老舗とは“古いまま”ではなく、改善の歴史の別名
とも言うべき存在なのです。
守ることを言葉でかかげ、変えることを小さく試し、
やる・やめるを丁寧に決める——それだけで、信頼という資産は少しずつ
厚みを増します。

参考:三越伊勢丹編集部.“三越伊勢丹アプリ・リモートショッピング・オンラインストア”. 三越伊勢丹 公式サイト, 2025-12-10, https://www.mistore.jp/shopping/campaign/online_cp.html

 

 

まとめ

“老舗”の本質は、歴史の長さより「続けるために変わり続ける意思」にあります。
日本には創業100年以上が4万社超という厚みがあり、
地域の暮らしを支える業種を中心に息づいています。
老舗それぞれが、一本背筋の通った考えや思いの中、伝え方や仕組みを変え、
ブラッシュアップし続けてきました。

続いてきた——変え続けてきた——その考えや仕組みを学び、
これからの自社姿勢に取り入れることで、
よどんでいた流れに動きが戻ってくるかもしれませんし、
迷っていたことの解決策となるかもしれません。

固まった考え方を少し変化させ、
「老舗の——」いいえ、言い換えれば「企業としての大先輩」の背中を追いかけ
新年のはじまりに、「自社なりの“芯”を決め、変える一歩を小さく始める」。
その姿勢が、今年の商いをじわりと強くするに違いありません。

 

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