第45回経営者コラム|トレンドについて考える13 中古・リユース品を「誇らしく」使う時代 〜新しさより、積み重ねが選ばれる理由〜

2024年度後期の連続テレビ小説『おむすび』では
主役の姉が古着屋を営むシーンが取り上げられていました。
古着を着ている人、中古家具を使っている店、
あえて「ヴィンテージ」と表現された空間や道具。
ここ数年、街やSNSで見かける光景が少し変わってきたと感じます。
それらは、節約のためでも、仕方なく選んでいるわけでもありません。
「それが好きだから」「それが自分らしいから」という、
誇らしさをまとって使われています。
時代は、「中古・リユースが“特別な選択”ではなくなった」のです。
古着や中古家具を使っている人を見かけても、
「節約している」「妥協している」といった印象を抱くことはなく、
むしろ、「その人らしい選択」「こだわりが感じられる持ち物」として、
個性が感じられ、おしゃれな人だとさえ感じます。
中古・リユース品は、新品の代わりではなく、
最初から“選ばれる存在”になりつつあるのです。
そんな時代の背景や奥行きを感じながら、
「事業展開のヒントとして捉える」、そんなお話をしようと思います。
目次
リユース品を“誇らしく使う”
を象徴?「メルカリ」

この変化を象徴する存在の一つが、フリマアプリの 「メルカリ 」です。
メルカリは「不用品を安く処分する場所」というより、
個人が持っていた物を、欲しい誰かのもとへ、
次の人へと気持ちよく渡す場として広く浸透しました。
新品市場では見当たらなくても、メルカリなら見つかるかもしれない、
自分にとって価値あるものを探せる場であるとも言えます。
特に、若い世代を中心に「新品を探す前に、まずメルカリを見る」
という行動が当たり前になっています。
これは、中古品に対する「できれば避けたい」という感覚が薄れ、
中古であること自体が価値の一部になったことを示しています。

参考出典(画像含):mercari株式会社メルカリ, プレスリリース,フリマアプリ「メルカリ」、サービス開始10周年記念インフォグラフィックス公開,https://about.mercari.com/press/news/articles/20230630_infographics/,2016.0125
なぜ、メルカリは
使われ続けているのか?に学ぶ
メルカリの公式資料を見ると、利用者数や取引される金額は、
一時的な流行ではなく、年を追うごとに増えていることが分かります。
その理由は、単に「安く買える」からではありません。
- 誰かの暮らしの中で使われてきた物であること
- 同じ商品でも、一点ずつ状態や背景が異なること
- 自分の選択に、物語が生まれること
こうした要素が、買い物そのものを“体験”に変えているのです。

参考出典(画像含):mercari株式会社メルカリ, プレスリリース,フリマアプリ「メルカリ」、サービス開始10周年記念インフォグラフィックス公開,https://about.mercari.com/press/news/articles/20230630_infographics/,2016.0125
リユースは、日本でもっと前から
続いていた文化だった
リユースという考え方は、
決して新しい価値観ではありません。
好景気や大量消費の時代よりも前、
日本人は、壊れたものを「価値が下がったもの」とは捉えていませんでした。
欠けた器を漆でつなぎ直す金継ぎは、単なる修復技術ではなく、
その傷を含めて、その器らしさとして受け入れる美意識でした。
まっさらであることよりも、
使われてきた時間や、そこに生まれた表情を大切にする。
その選択は、
「それが好きだから」「それが自分らしいから」
という感覚に近いものだったのかもしれません。
金継ぎされた器を選ぶことが、その人の個性や美意識を映し出す。
ひと目で「こだわりのある人だ」「おしゃれな感覚を持っている人だ」
と感じさせる――
そんな価値観が、日本の暮らしの中には確かにありました。
個人同士で「つなぐ」文化としてのYahoo!オークション

前述の感覚が、デジタルの世界で形になった例の一つが、
Yahoo!オークション です。
1990年代後半から続くこのサービスは、「不要な物を捨てずに、必要な人へ渡す」
という行動を、日本に定着させました。
当時は、「処分の手段」「少しでもお金に換える方法」
という意味合いが強かったのも事実です。
しかし、個人が持っていた物が、
別の誰かの暮らしへと受け継がれていく――
その体験の積み重ねが、現在のリユース文化の確かな土台になっています。
参考出典(画像含):Yahoo! JAPAN,“Yahoo!オークション サービス概要”,Yahoo! JAPAN,2023年,
https://auctions.yahoo.co.jp/,2023年改定
実は、世界でも同じ流れが起きている!
この動きは、日本だけのものではありません。

世界最大級のオンラインマーケットである「eBay 」でも、
中古品や「以前に使われていた物」を探す利用者は、
長年にわたって一定数存在し続けています。
大量生産・大量消費を経験した社会だからこそ、
時間を経た物を評価する視点が、世界的に共有され始めていると
言えるでしょう。
参考出典(ロゴ画像含):ebay,eBayについて, 190ヵ国に展開する 世界最大規模のマーケットプレイス,
https://www.ebay.co.jp/about-ebay/
「新品を売らない」という選択
【Patagonia(米)】
中古・リユースを
企業の姿勢として明確に打ち出している例が、
米国のアウトドアブランド Patagonia です。
Patagoniaは、新しい製品を売り続けることを前提とせず、
自社製品を修理し、繰り返し使うことを公式に推奨しています。
「Worn Wear」と呼ばれる取り組みでは、
使い込まれた衣類を修理・再利用し、
使われ続けていること自体を価値として提示しています。

使い込まれた跡を「価値」として伝えるPatagoniaのWorn Wear
出典:Patagonia,“Worn Wear”,Patagonia公式サイト,2024年,https://wornwear.patagonia.com/,2024年改定
画像出典:Bradon Wood,GEARIST,Patagonia Repair Review, https://www.gearist.com/patagonia-repair-review/?utm_source=chatgpt.com, Aug 23,2022
【ReTuna Återbruksgalleria(スウェーデン)】
中古・リユースを
個人の選択にとどめず、
社会文化として成立させている例が、
スウェーデンの ReTuna Återbruksgalleria です。
ReTunaは、世界初のリユース専門ショッピングモール。
並ぶのは、修理され、手を加えられ、
再び命を吹き込まれた中古品ばかりです。
ここでは
「中古を選ぶ=我慢」ではなく、
時間を経た物を選ぶことが、かっこいい
という価値観が共有されています。


中古を「選びたい文化」に変えた、世界初のリユース専門モール
出典:Eskilstuna Municipality,“ReTuna Återbruksgalleria”,Eskilstuna公式サイト,2023年,
https://www.retuna.se/,2023年改定
画像出典:Planet Aid,Transforming Waste into Wonder:Inside ReTune,theWorkds’s Farst Reuse Mall,
https://www.planetaid.org/blog/inside-retuna?utm_source=chatgpt.com, 20260115
画像出典::WikipwdiA, https://en.wikipedia.org/wiki/ReTuna?utm_source=chatgpt.com,20260115
画像出典::INGKA, IKEA second hand pop-up at ReTuna extended for another year,
この変化は、企業を見る目にも表れている
中古・リユース文化の広がりは、モノの選び方だけでなく、
企業やお店を見る目にも影響しています。
生活者が重視し始めているのは、
どれだけ新しいか、どれだけ今風か、ではありません。
- どんな姿勢で続けてきたのか
- 何を大切に守ってきたのか
こうした時間の積み重ねに、安心感や信頼を覚える人が増えているようです。
事業者にとっては?
このトレンドを前に、中小企業や地域事業者に問われているのは、
とてもシンプルなことです。
自社は、「新しさばかりを語っていないか」。
時間をかけて積み重ねてきた価値を、「お客様に伝わる形で示せているか」。
ここで言う「時間」とは、創業年数や実績の数字ではありません。
- 続けてきた理由
- 変えなかった判断
- 試行錯誤の履歴
といった、背景としての時間です。
時間の価値を信頼に変えるために事業者ができる5つの具体アクション
1)「新しいこと」の説明を減らす
新商品や新施策よりも、なぜ続けてきたのかをただ一つ語ってみましょう。
積み重ねた理由は、それだけで企業の姿勢を伝えることになります。
2)きれいに整えすぎないないように
完成された成功談だけでなく、途中の試行錯誤も残しましょう。
過程が見えることで、企業は現実味を帯びるのです。
3)数字より「関係」を語る
年数や実績より、誰と関係を続けてきたかを伝えましょう。
関係性は、時間をかけて築かれた信頼の証になるのです。
4)変えたことより、守ったことをしめす
時代に合わせて変えたこと以上に、変えなかった判断を言葉にすることが重要。
守り続けたものが、企業の軸を浮かび上がらせることになります。
5)「変わらない良さ」を隠さないようにする
無理に今風に寄せず、時間を重ねてきた姿をそのまま見せましょう。
その落ち着きが、安心感として伝わります。
まとめ
中古・リユース品が誇らしく選ばれるようになった背景には、
時間を引き受けてきたものを評価したいという
生活者の視点があります。
この視点は、企業やお店にも向けられています。
新しいかどうか、ではなく「どう続けてきたか」。
派手かどうか、ではなく「何を守ってきたか」。
中古・リユース文化の広がりは、
時間を味方につけてきた企業が、その歩みを“強み”として
語れる時代が来たことを、そして、それを語るべきだ!と
静かに示しているのかもしれません。

